順天堂大学医学部附属順天堂病院Report活動報告

Report

学術活動

臨床応用が可能な老化細胞除去薬の発見に成功し、その結果がNature Aging誌に掲載され、プレスリリースされました。

「老化細胞」とは、様々なストレスにより細胞分裂が停止した細胞で、通常は免疫系により除去されます。しかし、加齢や肥満による免疫力低下により蓄積し、慢性的な炎症を引き起こすことで、動脈硬化、心不全、認知症などの加齢関連疾患に関与することが知られています。

今回、勝海悟郎特任助教、南野徹教授らの研究グループは、糖尿病治療薬である「SGLT2阻害薬」を用いて「老化細胞」を除去することに成功し、そのメカニズムを解明しました。この成果は科学雑誌「Nature Aging」に掲載され、5月29日にプレスリリースされました。

Nature Aging誌
SGLT2 inhibition eliminates senescent cells and alleviates pathological aging
https://www.nature.com/articles/s43587-024-00642-y

研究グループは、加齢や肥満により「老化細胞」が蓄積したマウスに「SGLT2阻害薬」を投与したところ、内臓脂肪の「老化細胞」が減少し、動脈硬化などの症状が改善することを発見しました。また、この効果は「SGLT2阻害薬」が「老化細胞」に存在する免疫抑制分子「PD-L1」を低下させることで免疫を活性化し、「老化細胞」除去を促進することによるものであることが明らかになりました。

老化細胞除去薬は世界中で研究開発が進められていますが、多くは抗がん剤として使用されるものであり、副作用の懸念があります。「SGLT2阻害薬」は自己免疫を活性化することで老化細胞除去を促進する新しいタイプの薬であり、既に臨床で使用されているため、副作用のリスクが低い治療薬とされています。今後、アルツハイマー病を含む様々な加齢関連疾患への適用や、ヒトへの臨床応用が期待されています。

この成果は順天堂大学のニュース&イベントで紹介されており、各メディアにも取り上げられています。詳細は以下のリンクからご覧いただけます。

順天堂大学のニュース&イベント
https://www.juntendo.ac.jp/news/18741.html
日経新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG272XZ0X20C24A5000000/
NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240530/k10014466021000.html
また老化制御グループのページにも研究に関する内容が記載されておりますので、こちらも合わせて是非ご覧ください!
https://juntendo-cvbm.com/research/aging.html