SGLT2阻害薬療法
SGLT2 inhibitor
はじめに
SGLT2阻害薬による体重減少や血糖値の改善に関する多数の臨床試験の結果も報告されていますが、単にダイエットを目的にしたものではなく、あくまでも健康の維持、改善を補助する役割として期待されるものとなります。
また、2024年5月に、老化細胞除去作用(セノリティクス)の効果があることが新たに報告されました。
順天堂大学医学部循環器内科 南野徹教授らの研究グループは、「老化細胞」をSGLT2阻害薬を使って取り除くことに成功し、その作用機序を明らかにしました。「老化細胞」は様々なストレスで引き起こされる細胞分裂しなくなった細胞で、通常は免疫などによって除去されるものの、加齢や肥満などの免疫力が下がってくると蓄積し慢性的な炎症状態を起こすことで、動脈硬化や心不全、認知症などの加齢疾患の発症に関与することがわかっており、SGLT2阻害薬による改善が期待されています。
SGLT2阻害薬療法
診療 | 保険外診療(自由診療) |
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名称 | SGLT2阻害薬療法 |
処方薬 | ジャディアンス(SGLT2阻害薬) |
料金 | ※診察料3,000円(初回のみ) ※10mg 1錠500円 ■15日分(15錠) 7,500円 ■30日分(30錠) 15,000円 (※全て税込) |
服用 | 1日1回 1錠 |
SGLT2阻害薬が齎す効果について
SGLT2阻害薬(SGLT2 inhibitors)は、糖尿病患者の治療に使用される薬剤ですが、近年、その他の健康上の利点が注目されています。
SGLT2阻害薬の健康上の主な利点は、次のとおりです。
- ①血糖値の改善:SGLT2阻害薬は、腎臓での糖の再吸収を阻害するため、血糖値を下げる効果があります。
- ②体重減少:SGLT2阻害薬は、尿中に糖を排出するため、カロリー摂取量を減らすことができます。
1日に200~300 kcal程度の糖を尿中に排泄することから体重減少効果が期待されており、1年間で約2〜4キログラムの体重減少が見られたと報告されています。 - ③血圧の改善:SGLT2阻害薬は、利尿作用により水分と塩分を体内の排出を増やすため、血圧を下げる効果があります。
- ④心不全のリスク低下:SGLT2阻害薬は、心臓血管系に対する保護効果があります。これにより心不全のリスクの低下や腎臓保護などの効果が報告されています。
- ⑤腎臓疾患の進行防止:SGLT2阻害薬は、腎臓での糖の再吸収を減らすため、糸球体への負担を軽減できると言われています。これにより、腎臓の機能を保護し、腎臓疾患の進行を防ぐことができます。
以上のように、SGLT2阻害薬は、糖尿病だけでなく、多くの健康上の利点があることがわかっています。 ただし、医師による処方箋が必要であり、適切な量の投与と使用方法を確認することが必要です。
安全性について
安全性については、SGLT2阻害薬は一般的に安全であると考えられていますが、副作用も報告されています。代表的な副作用としては、尿路感染症、低血糖、浮腫、脱水、腎機能の一時的な低下などが挙げられます。 特に、脱水や腎機能の低下には注意が必要です。 また、女性においては、外陰部のカンジダ菌感染症の発生率が上昇する可能性があるとされています。
感染症の予防は、排尿後シャワートイレで清潔に洗浄することで感染を抑えることができます。
SGLT2阻害薬を使用する際には、医師の指示する、適切な使用法や副作用についても理解することが重要です。
エビデンス
EMPA-REG OUTCOME試験:この試験は、心血管疾患の高リスク患者に対して、エンパグリフロジン(SGLT2阻害薬の一つ)を投与した場合の効果を検証したものです。その結果、エンパグリフロジンを投与された患者群では、心血管死、心不全入院、非致死性脳卒中のリスクが意図的に低下したことが報告されています。
CANVAS試験:この試験は、カナグリフロジン(SGLT2阻害薬の一つ)を投与した場合の心血管イベントの発生率を調査したものです。その結果、カナグリフロジンを投与された患者群では、心不全入院、非致死性脳卒中のリスクが意図的に低下したことが報告されています。
DECLARE-TIMI 58試験:この試験は、ダパグリフロジン(SGLT2阻害薬の一つ)を投与した場合の心血管イベントの発生率を調査したものです。その結果、ダパグリフロジンを投与された患者群では、心血管死亡、心不全入院、非致死性脳卒中のリスクが低下する傾向があることが報告されています。
SGLT2阻害薬による体重減少や血糖値の改善に関する多数の臨床試験の結果も報告されていますが、単にダイエットを目的にしたものではなく、あくまでも健康の維持、改善を補助する役割として期待されるものとなります。
2024年5月 老化細胞除去治療「セノリティクス」の概念からもSGLT2阻害薬によって効果を齎すことが報告されました。
SGLT2阻害薬は腎臓から糖と水分を尿中に排泄するため、糖尿病だけでなく心不全患者においても予後を改善することが報告されましたが、利尿作用以外にも良い効果があるのではないかと考えられセノリティクス作用についても調べたところ、老化細胞はアポトーシス抵抗性を有しているだけでなく、免疫系によっても排除されないようなメカニズムがあることで体内に蓄積することがわかった。
本庶博士がノーベル賞を受賞したT細胞を制御するPD-L1 などの免疫チェックポイントに関わる分子は実際に老化細胞でも亢進していた。
SGLT2阻害薬はこの老化細胞のPD-L1を低下させることで、老化細胞が免疫系によって除去されることを促す、内因性のセノリティクス誘導作用があることがわかりました。
SGLT2阻害薬は比較的新しい薬剤ではあるものの、広く使われている薬剤でもあり、老化に対する臨床試験も期待されています。